全国の加賀種使いに会いに行く/vol.1 塩芳軒

高家社長、どうして京菓子の銘店が金沢の加賀種にこだわるんですか?

譲れないものがあるからパートナー選びも妥協できない。

塩芳軒 四代目主人 高家昌昭

お店の面構えにオーラを感じます。伝統の京菓子を継承してきた矜持が漂っていますね。

「ありがとうございます。でも、伝統を守ることが目的じゃないですよ。“美味しくあること”が目的です。時代ごとに好まれる味というのがあるんです。昔の味に固執してたら受け入れられない。日々勉強です。前提として、お菓子は甘くないと駄目でしょ。でも、甘味には加減がある。甘味料もいろいろありますし、“皮”“種”との相性によっても変わりますよね。私どもの『しののめ』という生姜砂糖のうす種せんべい。これには七年ほど前から加賀種食品工業さんの種を使わせてもらってますけど、当初はいろいろ試作してもらいましたね。砂糖蜜を塗ったときに剥がれたり反ったりしたらいけない。手でサクッと割れない硬さは駄目だし、割ったときにパラパラと粉が落ちてもいけない。絶妙な硬さと薄さになるまで何度も試行錯誤しましたよね。かなり大変だったと思います(笑)」

最中のときも塩芳軒さんの並々ならぬこだわりを感じました。

「四年前でしたね。うす種がよかったものですから、最中にも加賀種さんの皮を使いたいと相談しました。皮はもちろん大事ですが、私たちにとっては餡子ありきです。最初に試作してもらった皮は、うちの餡子に対してちょっと硬かった。餡子は舌の先でつぶせるくらいがいいので、うちのは柔らかいんです。その柔らかさに対して皮が硬かったわけですけど、さぁ、そこから米粉の水分をどうするか、配合をどうするか。割ったときに餡子がポロッと落ちないように。割ったら餡がしっとりと顔をのぞかせるようじゃないと。難しかったと思いますよ。私は何も配合せず、本来の米粉だけで最中をつくりたかったので、さらに難題だったんじゃないですか」

しかし、なぜ加賀種食品工業に任せていただいたのですか。

「お話しした開発経緯からも分かるように、いっしょに商品をつくることに対して真摯に取り組んでくださる。うちのこだわりを、こだわりで表現してくださると言いましょうか。それとパートナー選びの一番の決め手は、いかに継続して安定供給してもらえるかです。私たちは次の代のことまで考えて菓子をつくります。この先何十年も安定して供給してくれるパートナーじゃないと駄目なんですよ。地元の京都にももちろん業者さんはあるんですよ。でも、塩芳軒は金沢の加賀種さんじゃないといけなかった。いま目の前のこだわりだけじゃなくて、何十年も先までこだわりつづけるためのパートナーは金沢にいたということです。ちなみに加賀種さんの創業は明治十年ですか。私たちとほぼ同時代の創業ですね」

今後はどのような展開をお考えですか。

「粛々と、ですね。無理をすると暖簾としての味がつぶれていきます。むやみに百貨店に卸さないのも、自分たちの目の届く範囲でやりたいからです。拡大しても味を落とさないブランドもありますから、まぁ私は経営が下手なんでしょうね(苦笑)。身の丈にあったことを真摯にやりつづけて、次の代に継承していくことが目標です」

  • 生姜砂糖のうす種せんべい「しののめ」。加賀種食品工業が高家社長から仕事の依頼をいただくきっかけになった商品。

  • 加賀種食品工業では現在、最中種とせんべい合わせ6種類の注文を受けている。すべての商品が甲乙のない安定した味をつくり納品する。